『 科学と非科学の間(はざま) 安斎育郎 著 ちくま文庫 より
』
( 六章 科学と非科学の間(はざま) 二、体験の絶対化 )
(「価値的命題」---
価値の選択、好き嫌いの好み、個々の価値観が主題になる物事。)
(「科学的命題」--- 正しい(本当)か正しくない(ウソ)かを客観的に決めることができ、答えを出す必要のある主題のこと。(個々の価値観(好み)には左右されない))
「 科学的命題群の場合、正しいか正しくないかの判定は「事実との照合」によってなされるわけですが、「超常現象」の主張の検証には、まさにこの点で重大な困難が持ち込まれることが多いのです。
」
(〜中略〜)
「 「超能力は心の影だから、懐疑的な人がいると、その人の心の影が反映されて超能力現象が起こらなくなる」と言った類です。
したがって、科学者は、事実と照らし合わせることの出来る客観的な検証を求め、そのような条件が保証されていない場合には、その現象を「超常現象」と認めることを拒否します。
一方、そのような現象の体験者や目撃者は、しばしば自分の感覚器官を通じて「直接確かめた経験」を絶対化し、ろくに科学的に検証することもなく、その命題が正しいことを信じ込みます。「自己の体験」を至上のものとして絶対化し、他の膨大な知識の体系と理論的に矛盾しないかどうかなどということは無視ないし軽視します。こうして「科学」と「非科学」の境界が不明確にされるのです。
」
(〜中略〜)
「 感覚器官は不完全なものであり、感覚器官を通しての認知は「錯覚」に陥りやすいものだということを、人々はなかなか認めようとせず、自分の体験に対する非常に強い執着性を示します。
」